働いている女性が、妊娠・出産しても、安心して安全に働くことができる職場環境を会社が整えていくことは、「男女雇用機会均等法における母性健康管理」「労働基準法における母性保護規定」の観点からも、対策をしていくことが必要不可欠になります。
また、このような会社の取り組みが、社会全体へと広がり、日本全体として安心・安全に子供を産み、育てることができるようになります。
職場において、女性が妊娠・出産した時の問題点
<本人の問題>
- 妊娠しても、言い出しにくい職場環境の為、なかなか妊娠を言いだせない。
- 辛いと感じても、言い出しにくい職場環境の為、無理してしまう。
- 妊娠経過が順調だからと自己判断で頑張りすぎて、体調を崩す。
- 職場の配慮に対して感謝の気持ちがなく、周囲とのトラブルが起こる。(当然の権利と思っている人もいる)
<職場の問題>
- 法令順守していないため、不利益取り扱いやハラスメントが常態化している。
- 妊娠や出産に関する社内制度が十分整備されていない為、女性労働者の退職、休職が多くなり、人材不足や生産性の低下を招く。
会社として、女性が妊娠・出産しても、安心・安全に働ける環境整備を行い、安定した人材の確保と生産性の維持・向上を図ることが必要です。
安心・安全の職場環境作りのポイント
事前準備
業務の点検
- 妊産婦に対する就業制限のある業務を明確化する。
- 事前に対応が必要な業務をリストアップする。休憩場所の確保など設備面の改善を図る。
- 人員体制や労働時間管理などの問題点を把握する。
社内制度の整備
- 社内規則等による制度化。
- 相談・対応窓口の明確化と整備。
- 妊産婦健康管理の流れのルール化。
- 制度を社員に周知する。
教育の実施
管理職や従業員に対し、女性の健康管理についての教育を実施する
対応例
労働時間の見直し
休憩時間の延長、休憩回数の増加、休憩時間帯の変更等
- 回数に制限を設けず、適宜休憩を取らせる。
- 休憩の時間帯をずらしたり、時間を長くするなど柔軟に対応する。
時間外労働の免除
夜勤の免除、早番、遅番の免除、勤務シフトの調整
- シフトは人事・労務管理部門が確認し、身体に無理がかからないように必要に応じて調整する。
- 事前に妊婦健診の日程を聞いておき、シフトを組む際に休みやすいように配慮する。
休憩
横になって休める休憩場所の確保
- 打合せスペース、応接室、更衣室などを応急の休憩室として利用。
- 横になったり、足をのばして休めるように長椅子を設置。
- カーテンやパーテーションを使用して、人目を気にせず休めるようにする。
業務中に休憩を取りやすくする工夫
- 立ち作業に従事する従業員のそばに椅子を置く。
- 体調次第で適宜休憩を取れるようにし、上司、同僚にも理解を働きかける。
業務分担の見直し
- 「できること」を無理のない範囲で行えるように配慮する。
- 必ず女性労働者本人の意向を確認し、一人ひとりに適した対応を取る。
他の軽易な業務への転換、配置転換、業務配分の工夫
- 書類の作成、PC業務など事務作業への転換。
- 比較的身体的負担の少ない部署への配置転換。
- 妊娠中の女性労働者の担当業務をリストアップし、細分化し、担当業務を再配分する。
現行業務での負担軽減法を検討
- 重量物の持ち運びなどの作業は免除し、他のスタッフが行う。
- こまめに休憩を入れながら業務を行う。
代替要員の確保
妊娠した女性労働者への作業の制限や業務転換等、母性健康管理措置や体調不良による急な休みにより、職場内の要因が不足することがあります。
- 普段から書類やデータの保管場所や業務の進捗状況などの共有に努め、急な休みの時でも周囲がフォローできるような体制を整える。
- 他部署から応援要請できるよう、ミーティング等で情報の共有を行い、欠員が出そうな部署について、事前に把握するようにする。
- 出産時期を見越して、妊娠報告時点から期間をかけて、引継体制を進めて行く。
妊娠・出産等に関するハラスメント防止対策
- ハラスメントの内容、事業主の方針等を明確化し、周知する。
- 妊産婦が利用できる制度について全体に周知し、配慮を促す。
- 管理職を含む全従業員向けに、研修を実施する。
- 相談窓口を設置し、女性労働者が気軽に相談できるよう配慮する。
まとめ
女性が妊娠・出産しても安心・安全に働ける職場環境は、女性が辞めない組織づくりにおいて大きな役割を果たします。
また、女性が妊娠・出産しても安心・安全に働ける職場環境づくりは、「女性の健康保持・増進に向けた取り組み」の一環として、健康経営の推進にもつながります。
1つ1つの企業が「女性が妊娠・出産しても安心・安全に働ける職場環境づくり」に取り組むことで、社会全体へ広がり、女性が安心して子供を産み育てる社会へなることが期待できます。